大腸がんとは
あらゆるがんの種類の中で、大腸がんは最も罹患数が多いことを知っているでしょうか。また、大腸がんによる死亡数も高いデータが出ており、今後も罹患数・死亡数は増加すると予想されています。 とはいえ、大腸がんは、早期発見・早期治療ができれば完治できます。しかし、この事実を知る方は多くありません。 2021年にオリンパス社が約1万9000千人を対象におこなったWeb調査によると「大腸がんで早期発見・早期治療を受けた人の90%以上は治ると思う」と答えた割合は24%しかおらず、大腸がんは治るものではないというイメージが浸透していることがわかりました。 一方で、全がん加盟施設における生存率共同調査(2011〜2013年)によると、早期大腸がんの生存率(5年間)は98.8%です。(一般的な死因を調整済み) 大腸がんとは、大腸(結腸・直腸)に発生するがんです。大腸がんには、腺腫と呼ばれる良性のポリープががん化するものと、正常な粘膜から直接がんが発生するものがあります。 日本人の場合、直腸とS状結腸にがんが発生しやすいと言われています。大腸の粘膜に発生したがんは、徐々に大腸の壁に深く侵入し、大腸の壁の外まで広がりながら腹膜へ転移します。 また、大腸の壁の中を流れるリンパ液を経由してリンパ節へ転移したり、血液を経由して肝臓や肺などの臓器へ転移したりするケースがあるでしょう。
大腸がんの症状
早期の段階では、自覚症状はほとんどありません。一方で、大腸がんが進行すると、主に血便・下血・貧血・便秘・下痢などの症状がでることがあります。 さらに進行すると、腸閉塞になって便が詰まって腹痛や嘔吐、体重減少などの症状が出る場合があるでしょう。 大腸がんは40歳以上の方が多く、症状がある場合には検査することを強くおすすめします
大腸がんの原因
大腸がんの原因として挙げられるのが、生活習慣の乱れです。喫煙・飲酒・肥満により、大腸がんの発生リスクが高まるとされています。 また、女性の場合、加工肉や赤肉の摂取によって大腸がんが発生する危険性が高くなる可能性があると言われています。 さらに家族の病歴も関連性があるとされ、とくに常染色体優性遺伝疾患と呼ばれる家族性大腸腺腫やリンチ症候群の家系の場合、近親者に大腸がんの発生が多くみられるでしょう。 一方で、大腸がんは男性で2番、女性で1番目に多いがん死亡の原因です。どなたでも大腸がんになりうるため、どんなに規則正しい生活をしていても注意が必要です。 頻度の高い疾患であり、健康法などで予防できる範囲は限られているため、定期的な検査が重要です。
大腸がんの検査方法
大腸がん検診としての便潜血検査は有用であるものの、検査の正確性が低いため、症状やリスクがある方に対しておこなうことは推奨されていません。
大腸がんの検査では、おもに大腸内視鏡検査をおこないます。そのほか、バリウム検査・カプセル内視鏡検査・CT検査などがありますが、どの方法であっても検査前に下剤を内服する必要があり、準備のために手間が大きくかかります。 また、大腸内視鏡検査以外では便とポリープや癌との区別がしにくかったり、同時に治療できなかったりするため、大腸内視鏡検査をおこなうのが一般的です。 「鎮静剤を用いることができない事情がある」「どうしても最後まで大腸内視鏡が到達しない」などの特殊な事情がある場合以外(個人的にはここ6年3000件以上の検査で最後まで到達しなかったことはないですが)は、大腸内視鏡検査がゴールデンスタンダードといえます。
大腸カメラ検査(大腸内視鏡検査)
大腸内視鏡検査とは、内視鏡を肛門から挿入し、直腸から盲腸までの大腸全体を詳細に調べる検査です。大腸がんを発見するためのゴールデンスタンダードの検査です。 当院では患者さんが少しでもつらくないように、 ● 鎮静剤を使用できる ● 下剤の種類を選べる ● 下剤を自宅もしくはクリニック内でも内服できる ● 女性医師の診察を選択できる などの工夫をおこなっています。 大腸がんなどの病変が発見された場合は、病変全体または一部の組織を採取し、病理診断が実施されます。 また、当院では大腸ポリープなど治療が必要な前がん病変があった場合はその場で切除することも可能です。
バリウム検査
バリウム検査とはバリウムと空気を肛門から注入し、X線写真を撮る検査です。バリウム検査をおこなうと、大腸がんの正確な位置や大きさ、形や腸の狭さの程度が確認できます。 大腸内視鏡検査が発達した現在、一般的な検査ではないため、当院ではおこなっていません。
カプセル内視鏡検査
カプセル内視鏡検査とは、カプセル型の内視鏡を呑み込んで大腸を観察する方法です。検査自体の苦痛はほとんどないものの、カプセルが詰まってしまうことがあったり、カプセルを回収する必要があったりするなどの不便な点があります。 また、学会ガイドラインでは大腸がんの発見に対してエビデンスが乏しいため、リスクの高い高齢者に限定して使用することが提案されています。 通常の大腸内視鏡検査と異なり、ポリープがあってもその場で切除できません。そのため、ポリープが見つかった場合にもう一度大腸内視鏡検査をおこなう必要がある点もデメリットです。 学会ガイドラインでも特殊なケースで検討する検査方法とされているため、当院ではカプセル内視鏡検査をおこなっていません。必要な方は法人内病院である辻仲病院柏の葉へご案内いたします。
CT検査
CT検査でも大腸がんを調べることが可能です。一般のCTの検査と違い、お尻から管を入れ、そこから大腸にガスを注入し、CTを撮影して大腸の形に画像を再構成するものです。 ガイドラインではリスクの高い高齢者に検討する検査法として紹介されています。カプセル内視鏡検査同様、ポリープがあってもその場で切除することはできません。 当院ではCT検査をおこなうことができないため、必要な方は法人内病院である辻仲病院柏の葉を含む、他医療機関へご紹介させていただいています。
大腸がんの治療方法
大腸がんの治療は、がんの進行の程度を示す病期やがんの性質、体の状態などに基づいて検討されます。おもな治療法は、以下のとおりです。
内視鏡治療
内視鏡を使用し、大腸の内側からがんを切除する方法です。がんがリンパ節に転移している可能性がほとんどなく、技術的に切除できる大きさ・部位にある場合に適応されます。
手術
手術では、がんに侵されている部分だけでなく、がんが広がっている可能性のある腸管やリンパ節も切除します。
薬物療法
手術によりがんを切除するのが難しく、症状を緩和することを目的としておこなわれます。また、手術後の再発防止を防ぐ目的でも実施されます。
緩和ケア
がんに伴う心身の苦しみを和らげるためにおこないます。がんと診断されてから辛い日々を送る患者さんのためにサポートがなされます。
大腸がんが不安であったりお困りの方は当院までご相談ください
大腸がんは、最も罹患数・死亡数が多い疾患であるものの、早期発見ができれば完治できる可能性が高くなります。 とはいえ、自覚症状がなかなか出ないため、発見するのが難しいとされています。そのため、定期検診を受け、健康管理を続けていくことが大切です。 お腹の調子が悪く、不安に思う方は、遠慮なく当院までご相談ください。