痔とは
痔と聞いて馴染みのない病気と思う方がいるかもしれません。しかし、実は日本人の3人に1人は痔の持ち主と言われるほど、痔は私たちにとって身近な病気です。 痔とは、肛門や肛門周辺に生じる病気の総称です。痔は「痔核(じかく)=いぼ痔)」「裂肛(れっこう=切れ痔)」「痔瘻(じろう=あな痔)」3種類に分けられます。 痔の頻度が高いため、痔の症状かと思ったら、大腸がんを併発していることも多いです。実際、患者さん自身が単なる痔の症状と安易に考えて様子を見ていたところ、実際は進行大腸がんによる症状だったケースをたくさん見てきました。 とくに40歳以上の方や症状が続く方は、痔だと思った場合にも大腸内視鏡検査を検討することを強くおすすめします。
痔核(じかく)
痔核とは、肛門周辺にできるしこりです。一般的にいぼ痔と言われています。男女ともに最も患者数が多い痔であり、痔疾患の半数以上を占めます。 痔核は、内痔核と外痔核に分かれます。内痔核とは、直腸と肛門の境目である歯状線より内側にできた血管の集まりです。通常は、痔核とは内痔核を指しています。 外痔核とは、直腸と肛門の境目である歯状線より外側にできたものです。つまり皮膚の一部です。中でも外側に血豆ができたものを血栓性外痔核と呼びます。
裂肛(れっこう)
裂肛とは、肛門が切れたり、裂けたりした状態です。一般的に切れ痔と言われています。痔核の次に多いとされ、便秘で硬くなった便を押し出したり、下痢などの刺激を受けたりして生じることが多いです。 とくに便秘気味の方に多い疾患です。
痔瘻(じろう)
痔瘻とは、お尻に膿のトンネルができ、化膿を繰り返す状態です。(あな痔)直腸と肛門の境目である歯状線にある小さなくぼみに便が入り込むことで生じます。
痔の症状
痔の症状は種類に応じて異なります。おもな症状は以下のとおりです。
痔核(じかく)の症状
内痔核の症状は、排便時の出血や排便感などです。痛みはないことがほとんどですが、排便のたびに脱出して指で戻すような状態になるなど、生活の質が落ちることがあります。 血栓性外痔核の場合、突然、肛門周囲に硬いしこりが生じ、お尻に激しい痛みが生じるのが特徴です。 痛みは血豆により皮膚が引き延ばされて生じるものであるため、排便と関連ありません。また、血豆が破れることで出血するケースもあります。出血すると、痛みがひくことが多いです。
裂肛(れっこう)の症状
裂肛(れっこう)の症状 裂肛の症状は、排便時の激しい痛みや出血などです。切れた部分は周りを引き込むようにして治癒していきます。 こういった部分は、固くなってしまうため、排便に合わせて肛門が広がりづらくなり、さらに切れ痔を引き起こしやすくなります。さらに進行すると、傷が瘢痕化し、肛門自体が狭くなり、便が細くなってしまいます。
痔瘻(じろう)の症状
痔瘻の症状は、肛門の周囲に膿が溜まることで生じる腫れや痛みです。こういった状態を肛門周囲膿瘍と呼びます。 また、表面からわからないような部位に膿がたまり、肛門の痛みや発熱が主症状になることもあります。 緊急で手術が必要なことがあるため、こういった症状の場合は早めにご相談いただくことをおすすめします。
痔の原因
痔の原因は種類に応じて異なります。おもな原因は以下のとおりです。
痔核(じかく)の原因
痔核のおもな原因は、便秘や下痢などの排便異常や過度な飲酒、辛いものの食べ過ぎなどが挙げられます。
裂肛(れっこう)の原因
裂肛のおもな原因は、便秘により硬い便や太い便が出たり、下痢便が勢いよく出たりすることです。 普段は症状がない方でも、冬場に水を飲む量が減ったり、授乳中に脱水気味になり便秘が悪化したりすることで裂孔になることもあります。 このように生活習慣の変化と大きく関わりがある疾患です。
痔瘻(じろう)の原因
痔瘻のおもな原因は、はっきりしないことが多いです。
痔の検査方法
痔核、裂孔の場合は、視診(目視して診断する)・触診(幹部を触って診断する)により、肛門の周りの皮膚の状態を確認します。また、肛門鏡で肛門の内側と直腸の診察も実施します。 一般的によく勘違いされるのですが、大腸内視鏡検査は大腸を見るための検査であり、痔の検査方法としては適していません。痔を診察するためには肛門鏡診察が必要です。 したがって、痔について不安がある場合は、大腸内視鏡検査を予定したとしても、肛門科を受診して肛門診察を依頼しましょう。 痔瘻の場合は、上記の診察に加えて肛門エコーやMRI検査などで正確な位置や広がり、形などを確認する場合があります。
痔の治療方法
便秘や下痢、お尻に負担のかからない生活を心がけてもらうとともに、緩下剤や抗炎症作用をもつ坐薬・軟膏などを使用して改善を図ります。 また、大腸がんによる症状である可能性もあるため、痔と診断されても、とくに40歳以上の方は大腸内視鏡検査をすることをおすすめします。 生活習慣改善や薬物療法で対応できない場合、外科手術をおこないます。痔瘻の場合は、薬物治療はせず、肛門周囲膿瘍に対して手術を実施し、待機的に痔瘻の手術をおこなうことになります。
痔が不安であったりお困りの方は当院までご相談ください
痔は男女ともに発症する可能性のある疾患です。痔は、おもに痔核・裂肛・痔瘻の3種類に分かれ、それぞれによって症状や原因、検査方法などは異なります。 放置すると、症状が悪化し、場合によっては外科手術が必要になるケースもあるでしょう。 また、ご自身で痔の症状だと思っていても大腸がんが隠れていることも多くあります。安易に自己診断せず、肛門科を受診して肛門診察を受け、大腸内視鏡検査の必要性について必ず相談してください。 もし肛門周辺に違和感があったり、痛みが生じたりしている場合は、当院までご相談ください。