胃がんとは
人間ドックと聞いて、胃カメラを連想する方が多いのではないでしょうか。昨今、日本人の胃がんの発生率は減少傾向にあるものの、がんの種類の中では2番目に発症率が高い疾患とされています。 胃がんとは、胃の内側を覆う粘膜の細胞ががん化する疾患です。がん細胞が増殖すると、徐々に粘膜、粘膜下層、筋層、漿膜へと外側に広がっていきます。粘膜下層までにとどまる胃がんを早期胃がんといいます。 がん細胞が漿膜の外側まで達すると、胃の近くにある大腸・膵臓・横隔膜・肝臓などの臓器に広がります。 胃がんは、50歳を過ぎると徐々に増加し、80歳代で罹患率が最も高くなる疾患です。一方で、早期発見された胃がんは治療できます。 2021年にオリンパス社が約1万9000千人を対象におこなったWeb調査によると「胃がんで早期発見・早期治療を受けた人の90%以上は治ると思う」と答えた割合は30%しかいませんでした。 一方で、全がん加盟施設における生存率共同調査によると、早期胃がんの生存率(5年間)は98.8%です。(一般的な死因を調整済み) アンケート調査では「胃がんは早期発見・早期治療を受けても治らない」と思っている方が多いことがわかっていますが、実際に胃がんを早期発見すれば高い確率で治癒できます。 したがって、胃がん治療において最も重要なことは早期に胃がんを見つけることです。胃がんは治療しうることを自覚し、早期発見のために積極的に検査を受けましょう。
胃がんの症状
胃がんは、早期の段階だと自覚症状がほとんどありません。なぜなら、早期胃がんの定義である粘膜下層までには神経がないからです。 また、胃がんの場合、がんが進行しても症状が出ない場合があります。 胃の痛み・不快感・違和感・胸やけ・食欲不振・吐き気などが起こるとされているものの、これらは胃炎や胃潰瘍でも起こる症状です。 また、胃がんによって出血し、貧血や血便の症状が現れることもあるでしょう。なお、体重が減ったり、食事がつかえたりする場合は進行胃がんの可能性があるとされています。
胃がんの原因
胃がんのおもな原因は、ピロリ菌の感染です。ピロリ菌が胃の粘膜に存在すると、炎症が起こり、粘膜が萎縮して胃がんの発症リスクが高まります。 一方で、近年ではピロリ菌未感染、除菌後の胃がんなど、内視鏡診断技術の発達により、以前は認識できなかった胃がんの割合が増えています。 したがって、リスクが高くない場合にも、がん検診などの定期検査が必要です。また、喫煙や食塩・高塩分食品の摂取によって胃がんの発生率が高まるとされています。
胃がんの検査方法
胃がんの検査方法は、おもに以下の2つです。
胃内視鏡検査検査(胃カメラ)
胃内視鏡検査とは、口や鼻から内視鏡を挿入し、胃の内部を確認してがんが疑われる病変やその範囲と深さを調べる検査です。 胃内視鏡検査では、医師が直接的に胃の中を確認できるため、バリウム検査よりも正確に診断ができるとされています。 早期の胃がんの場合、わずかな盛り上がり・凹み・粘膜の色の違いなどで認識するしかないケースがあるため、胃内視鏡検査は有用です。 とくに、近年増加しているピロリ菌未感染胃がん、除菌後胃癌などは粘膜の色調変化のみで診断しなければならないことが多くあります。 そのため、ピロリ菌感染率が低下している現状では胃カメラでの検査が有用といえます。
バリウム検査
バリウム検査とは、X線を使用し、胃の様子を画像化する検査です。造影剤であるバリウムを飲んだ状態で検査すると、胃の形や内部の凹凸を確認することが可能です。 胃全体の形を捉えやすく、胃内視鏡検査よりも費用が安いものの、放射線被ばくがあり、バリウムを飲む際に苦しさを感じるケースがあります。 また、検査の正確性にも問題があります。2010年のデータによると、バリウム検査で二次検診として胃カメラを必要とする割合は8.5%程度とされているのです。 一方で、実際に胃カメラを受けた中で胃がんの割合は1%程度であり、効率のよい検査とは言えないのが現状です。胃がんの死亡抑制効果も胃カメラでの検診よりも低いことが知られています。
胃がんの治療方法
胃がんの治療法には、内視鏡治療・手術・薬物療法・緩和ケアなどがあります。治療法は、がんの進行具合を示す病期やがんの性質、体の状態などに基づいて検討します。
内視鏡治療
内視鏡を使用して胃の内側からがんを切除する方法です。がんが粘膜下層までにとどまっている場合におこなわれます。
手術
遠隔転移がなく、内視鏡治療による切除が困難な場合は手術による治療がおこなわれます。
薬物療法
手術によりがんを切除するのが難しい進行・再発胃がんに対しておこなわれる化学療法です。
緩和ケア
がんに伴う体の痛みや心の痛み、社会的な辛さを和らげる治療です。
胃がんが不安であったりお困りの方は当院までご相談ください
胃がんは、放置すると、症状が悪化して治癒率が低くなります。一方で、早期発見・早期治療ができれば、高い確率で完治できます。 胃がんは自覚症状がなく、発見が難しいとされているため、定期的に検査を受けることが必要です。 とくに50歳以上の方の場合、症状がなくとも2〜3年ごとの胃内視鏡検査(胃カメラ)を受けるようにしましょう。 また、ピロリ菌感染や除菌治療後などのリスクの高い方は、毎年検査することをおすすめします。 もし、胃のことで不安なことやお困りがある方は、遠慮なく当院までご相談ください。